みなさま、こんにちは。
一般社団法人日本在宅看護学会のホームページへようこそ。在宅看護について考えるところをご紹介しましょう。
在宅看護実践とは、疾病、障害、加齢にともなう暮らしにくさとともに、その人が自分の居場所で自分らしく暮らすことを支援する看護活動全般をさすと考えることをすすめています。在宅看護は訪問看護の同義語ではなく、訪問看護は在宅看護の目的を果たすための一つの手段であると位置づけています。では、訪問看護以外の在宅看護実践とは何でしょうか。あらゆる場所に暮らしがあって、その暮らしている人が病を得、病院に通うことを考えれば、外来は在宅看護実践の場になりますし、その方が入院すれば、退院支援や退院調整も在宅看護実践となり得ます。また、病院ではない施設でも暮らしを支える看護、すなわち在宅看護実践が求められていると考えています。これらの在宅看護実践は、訪問看護、外来看護、退院支援、ケアマネジメントといった医療保険や介護保険に依拠した看護実践と、地域で暮らす人々との交流から生まれる自助や互助を育てていく多様な看護実践があると考えられます。
2019年の暮れから私たちが経験した新型コロナウイルス感染症は、急性期医療で重傷患者を看るばかりではなく、在宅医療や訪問看護も含めて予防から重傷者対応まで、さまざまな局面で在宅看護が実践されました。これまで訪問看護は病状が安定している人に対して提供されるイメージがありましたが、国難ともいえる状況においては、それだけではないことが証明されました。病院での医療と在宅医療はつながっているということです。
この度の感染症パンデミックの経験は今回限りの事ではなく、少子高齢化の社会構造の中で、心不全患者の数の増加、人生の終末期を過ごす人の数の増加は、間違いなくやってくる国難です。私たちは、それに対して備えること、そして医療崩壊が起きないように皆で協力し合い、事に対峙する知恵を出し合うことが求められているのです。感染症から学んだ「備える力」をもって、慌てず、粛々と、人々とともに、皆が自分の居場所で生ききるための看護を考え、実践できる人材を育成したいと考えています。
在宅看護を実践する看護師の数は就労看護師の全体からすれば少ない状況が続いています。多くの看護師が在宅看護実践を学び、あらゆる看護現場で在宅看護の力を発揮することで、人々の暮らしの豊かさを支えることを目指すためには学問が欠かせません。そこにある現象を文字にするのが学問とするならば、質の高い在宅看護実践を学問し、学問すれば、それを多くの人に言葉で伝えることが可能となります。本学会は、在宅看護学の理解を深め、教育・普及に関わります。そうした学会活動を通して、人々が恐れることなく超高齢多死時代、そして災害多発時代に備え、よりよく暮らす力を身につけることができることを目指してまいりたいと考えます。
お互い頑張ってまいりましょう
2021年10月
一般社団法人日本在宅看護学会 理事長 山田 雅子